2025.10.30【お知らせ】全日本オリエンテーリング大会ミドル種目における未帰還者について

公益社団法人日本オリエンテーリング協会
会長 野田 聖子

10月4日(土)に開催された当協会が主催する第14回全日本オリエンテーリング大会(ミドル・ディスタンス競技部門)で、レースから帰還せず、捜索されていた高齢の男性競技者は、10月18日(土)、有志の皆さまと日本オリエンテーリング協会役員での捜索によりご遺体を発見、10月28日(火)、警察により当該競技者であることが確認されました。
ご遺族の皆様に心より哀悼の意を表しますとともに、深くお悔やみ申し上げます。

この間、捜索にあたってくださった地元の栃木県警察本部、那須塩原警察署、今市警察署、那須塩原市消防団、那須塩原市消防団塩原支団、那須地区消防組合、日光市消防本部、栃木県消防防災航空隊の方々、オリエンテーリング諸団体・競技者の方々のご尽力に対して、深く御礼申し上げます。

また、捜索中、有志の方の負傷事故が発生したことについて、負傷された方にお見舞いを申し上げます。

今後は、10月14日に開催された安全対策のオンライン説明会でお知らせした下記の対策を実施するとともに、警察による現場検証、捜査の結果を受けて、発見された状況やこれまでの捜索情報をもとに、事故発生の原因と、大会運営における安全管理についてさらに分析、立案し、安全管理を行ってまいります。

<10月14日説明会でお知らせした対策>
1)参加者が競技エリアから外れる可能性の低減(パトロール強化、テープの設置等)
2)ホイッスルの携帯
3)通信手段の携帯の推奨
4)位置情報把握システムの導入
5)参加者への安全対策の周知

地図とコンパスを頼りに山野に設定されたチェックポイントを見つけるオリエンテーリングは、自ら進路を決め、迷わずチェックポイントに到達する技術を競ったり楽しんだりするアウトドアスポーツです。そのため、道に迷うリスクも競技の特性の一つとして受け入れ、外部からの助力を得ることなくそれを乗り越えることも魅力であり、それを前提にルールやガイドラインを設定し、それらに準拠した大会運営を実施してきました。また、オリエンテーリングは、幅広い年代層や経験レベルの方が自然に親しむことのできる活動として参加いただいていますが、それに対応して年代や技術に応じたコースを設定する一方で、一般的な山野のリスクや一人で行動することに由来するリスクの啓発、あるいは対応方法等も、ガイドラインとして周知し、安心して大会に参加出来る環境構築に努力して参りました。

今回は全国規模の大会として当法人が主催となり開催を続けている大会で、年齢や技術・体力レベルに合わせたコースを提供し、幅広い方に参加いただいておりました。当該競技者の方が出場したコースも、比較的平坦で転倒や滑落などを含めたリスクの少ない、見通しのよい場所であり、競技的な楽しみを確保した上で、高齢者でも30分~1時間程度で踏破できるものを用意しました。また、競技会場がある那須塩原市ではクマの目撃情報はあるものの、準備中も含めて当該エリアではクマ等の目撃情報がないことも確認し、直前のクマ対応、参加者へのクマ鈴の推奨など、想定できるリスクに対する安全対策は規則やガイドラインを参考にして実施して参りました。

こうした想定を超えて本事案が発生したことから、想定や競技の中核に対する考え方の見直しも含めた抜本的な対策を当協会として検討しているところです。導入のハードルが低く実効性も高いスマホや専用端末を利用した位置情報把握システムの導入、エリア境界付近でのパトロールの強化、トラブル時の対応方法についての参加者への周知徹底、初心者から中級者並びに高齢者に対するレベルに応じた安全のための配慮の徹底、主催者を対象としたリスクマネジメント研修、地元の警察署・消防署等関係団体と事前に調整することでのトラブル発生時の速やかな対応、その他諸々の複合的な対策の実効性を検証しながら実装し、再発防止につなげてまいります。その上で、愛好者はもちろん、多くの方に安心して自然の中での活動を楽しんでいただく環境を提供できるよう尽力する所存です。

以上