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4-0.ルートチョイスについて

 スキーオリエンテーリングでは、私有地などの立ち入り禁止区域を除けば、どこを滑ろうが競技者の自由です。さらに言うと、スタートとゴールの際にスキーの板を持っていれば、スキーを脱いで競技をしても構いません。要は、主催者によって決められた複数のチェックポイントを、いかに早く回って帰ってこれるか、そこに注力すれば良いのです。

 スキーオリエンテーリングでは頭を使います。自動車に例えると、たとえフェラーリに乗っていても、地図も見ず、勘を頼りに進んでいては、いつまでたっても目的地に到着できません。きちんと地図を見て、ルートを考え、そして覚え、覚えたルート通りに車を運転し、時には工事・事故などの緊急事態に対処しながら進む、そういった点はスキーオリエンテーリングでもまったく同じです。どんなにスキー技術に優れた選手でも、頭を使い、考えないと上位に食い込むことは難しいでしょう。

 スキーオリエンテーリングにおいて、ルートを選択する際にはさまざまなことを考慮することが必要です。あるコントロールから次のコントロールまでのルートを考える際、大体以下のことに思いをめぐらす必要があるでしょう。

  • トラックの幅 、距離
  • 傾斜(登り、下り)
  • トラックの交差点の数
  • トラックの交差点の形
  • 当日の雪質

トラックの幅については、大きく分けて3種類あることは既にご存知ですね?当然、広いトラックでは、滑りやすく、スピードも出ますが、スノーモービルなどでつけたトラックでは、技術的にも体力的にも高度なモノが要求されるでしょう。大きく回ってでも広いトラックを進むべきか、多少つらいのは我慢しても距離が短くなることを選ぶのかの選択が必要になってきます。

 傾斜については、細かく意識する必要があります。登りは下りと比較して極端にスピードが落ちますし、より体力を必要としますので、なるべく避けた方が得策です。たとえ下りを選択することによって滑る距離が2倍程度になっても、結果的にタイムが早かったなんてことが良くあります。トラックが広いときには多少の登りでもなんとかなりますが、モービルトラックの登りでは、ほとんどがダブルポールという(非常に疲れる)テクニックを多用せざるをえません。

 しかし、下りを滑ると、あっという間にスピードが出てしまうため、曲がるポイントを見逃してしまうことがよくあります。下り始める前に、よく地図を読み、どのくらい先で、何をする必要があるのか、決めてから動くことが大切です。下ってしまった後に、行き過ぎに気づいて登り直すことほど悔しいものはありませんからね。

 トラックの交差点の数については、少なければ少ないほど良いです。当然、脳みそには限界がありますし、曲がる回数が少ないほうがスキーを滑らすことに集中できるしょう。通常のレースだと、交差点は300~500箇所以上通過します。この交差点の度にとまっていたのでは、かなりの時間の無駄になりますので、いかに交差点でのロスタイムを少なくするか、ここに勝負の分かれ目があります。

 トラックの交差点の形についても、感覚的に覚えて進むことが必要でしょう。三叉路なのか、そうでないのか、三叉路であればどのような形になっているのか、地図上に表記された線から、実際の地形を想像し、その地点に到達したときにはイメージどおりの地形が広がっているのが理想です。最近の地図はGPSなどの最新技術を利用して作られていることがほとんどなので、変だな、自分のイメージと違うな、と感じたときには地図を疑うのではなく、自分がミスをしていないかどうかを疑って、立ち止まってよく地図を読んだほうが良い場合が多いでしょう。 

では、実際のルートチョイスについて、簡単な例をご説明します。

  右の地図は、右の地図は、福島県磐梯高原の地図の一部です。

 仮に、スタート(△)から、ゴール(◎)までいくとしましょう。

 さて、どのようなルートチョイスが考えられるでしょう??

 まず、簡単に思いつくのは、まっすぐ行く方法です。

 でも、よく地図を見てください。このルートで行くと、等高線をたくさんまたいで、ピークまで上っていっていますね。この登りを考慮すると、たとえ距離が一番短くても、このルートが一番早いといえないかもしれません。

さぁ、次のルートチョイスを見てみましょう。

 この場合は、ピークまで上るのを避けて、途中の迂回道を通っていますね。

 若干の登りはあるものの、そのまま迂回しているので先ほどよりかは楽そうなルートですね。

ほかにはどのようなルートがあるでしょうか?

 今度のルートチョイスでは、のぼりを完全に迂回できるルートを選んでいますね。これならばしんどい思いをして、上る必要はありません。しかし、上の二つでは、ピステで圧雪されたトラックを選んでいましたが、このパターンではスノーモービルで圧雪された細い道を通る必要があります。したがって、広いトラックを滑るときのようなスピードはでないでしょう。また、交差点も多く、ただ滑るだけではなくきちんと右左を意識する必要がありそうですね。

 これで3つのルートを見てみましたが、どれがベストルートなのか、これはやってみないとわかりません。本人のスキーテクニック、雪の状態、トラックの状態、そして考えられるルートの直線距離、登距離などを総合的に考えて、その場で判断する必要があります。このようなルートチョイスは、レース中ずっと神経を研ぎ澄まして考え続けてなければいけません。ルートチョイスを間違えると、他の競技者よりもずっと余分に登る必要があったり、あるいは遠回りしたり、新雪にはまったり・・・。

 スキーの遅い人でも、早い人をルート選択の良さで負かせることがあったりと、ルートチョイスはスキーオリエンテーリングの楽しいところでもあり、恐いところでもあります。

 ルートチョイスの練習は、雪が無くてもできます。日頃から、運動しながら(走りながらでも)地図を読む練習をしておいたほうがよいでしょう。また、ルートチョイスがどんなに素晴らしくても、それを覚えて、しかも覚えたとおりにルートを進むこと、これがまた難しいということを覚えておきましょう。

 では、次にもう少し複雑な地図を見てみましょう。