今年のWOCについて

吉田です。

今年のWOCは森のオリエンテーリングについては予選決勝方式の最後の大会になります。予選通過を目指すという日本チームのスタンスは今回で終了です。
多くの選手が世界との差を経験する機会としてのWOCも今回で終わりとなります。
森オリエンテーリングにおいては世界との差を体感し、その上を目指すステップとしての場は、今回以降はワールドカップやワールドランキングイベント、地域選手権等に代わっていくでしょう。(WOCは結果を出す場所であり、本来はそれが当たり前なのですが)
そしてその中で結果を出したものだけがWOCでの決勝を走ることとなります。
一方、観客へのサービスを目的とした(これはオリンピック種目を目指すことにもつながる)街オリエンテーリングへのトライも終了、来年からは本格的な活動としてスプリントに加え、スプリントリレーが始まります。そういう意味で今年、来年のWOCは競技オリエンテーリングの大きな変化の時期となります。

 今年のWOCはミドル、リレーが同系統のテレインということで、リレーが短くなったことに加えて、ミドル出場者のリレーへの参加を促しています。ロングは昨年に引き続き高速テレインです。単なる持久力、筋力でなく、スピードを維持した上での長いオリエンテーリングを要求されます。男子のウイニングのミドルがキロ6分を維持している一方、ロングは5分を切ってきます。ロングのルートチョイスについても熟考ではなく、いくつかのパタンなかから即座に選ぶ選択の要素が強くなると思われます。こうした傾向はこれからも続いていくでしょう。

 プログラム順としてもロングは前半で終了、ミドルリレーは後半へということで、調整もしやすくなっています。昨年もロングチームとミドルチームに分けましたが、今年はスケジュール的にもテレイン的にもそれがさらに明確に促されているようです。

 これらの状況から、男子はロング組とミドル組に分けました。ミドルは本来はテクニカルなテレインなので、技術的には北欧等での競技経験が豊富な選手を振り分けるべきです。しかし、レースが終盤に行われるため調整時間がとれること、また今回は将来的な事を考えてリレーチームを若手で組む方針でしたので、ミドルチームは若手主体の編成としました。彼らはミドル・リレーのみに集中させますので、トレキャンの1週間で北欧テレインの基礎的な走り方をどれだけ習得できるかがポイントになります。もちろんこの適応が難しい選手がいる場合などはリレーメンバーをミドル組以外から選出する可能性も残っています。

 ロングは同一テレインの中に、3-4種類の特徴を持った地形が入ってきていますが、いずれも日本人にとっても比較的なじみやすい地形です。但し、ロングの予選が日程的に早いため、短期間での調整が必要となります。比較的調整が得意な選手、森でスピードを維持して走れる選手を配置しました。

 スプリントは、日本選手の中でロードの速い2選手を選ぶ一方、3番目は同一選択をせず、走力には劣るものの地図とのコンタクトを練習してきた1選手を出走させることとしました。これは来年に向けての選手選考の方向性を決めるひとつの実験でもあります。

 女子に関しては、JWOCから連続参加となります。若手で国際レース経験も少ない選手達であり、いずれにしろ複数のテレインへの準備は困難だと判断しました。
WOCのレース、JWOCのレースのどちらに重点を置くべきか考えましたが、比較的JWOCのテレインの方が対応しやすい事、複数リレーが経験できることから、JWOCの日程を優先しました。スプリントには参加可能ではありますが、レース続きになって切り替えが難しくなること、少しでも氷河地形のテレインでの練習経験を積ませたいことがあり、ミドル・リレーの出場としました。ミドルレースはリレーでしっかり走るためのトライという位置づけです。

 目標は男子はロングでキロタイム6分、ミドル7分。スプリントはトップ比110%。順位としては個人3種目とも20位以内となります。リレーでは今年こそアメリカに勝つこと。女子についてはリレーでのウムスタートを回避しての完走が目標です。

 前回男子は20位以内は一つも取れていません。リレーも集団の中でのレースができませんでした。まずここをクリアして一歩づつ前に進みたいと思います。

 次の記事では選手1人1人について紹介していきます。